どこかの誰かの秘密基地

このブログはどうせフィクションです

病床に臥して

もう書くこともないだろうと思っていた。
コロナというのは恐ろしい。ヒトの何もかもを壊してしまう。正直私はこのまま皆滅んでしまえと心から思う。








ようやく人々は、「生きることが辛い」と実感しだした。









休学し書かなくなってから、私はいろいろと変わった。
パニック障害と書かれた診断書をもらい、サークルにも結局復帰し、後輩ができ、惚れた人にはLINEをブロックされた。「骨を埋める」とまで豪語していたバイトも、迷惑をかけるのが辛くて辞めた。
残ったのはパニック発作と鬱だけだ。








明日、大学の先輩が文壇デビューを果たす。ついさっきメロンブックスで購入ボタンを押した所だ。サークルで知り合った方ではあるが、ほぼ一方的に知っているだけで、相手は名前を覚えているかすら怪しいだろう。自粛ムードが広がる前にお会いした時、彼の姿はどこか凜々しくて、少し遠かった。








ああいう人になりたかった。








面食いな私は、机出しにいた彼の端整な顔立ちに吸い込まれサークルに加入した。新歓の時点で気になってはいたが、入部を決めたのは机出しなので、殆ど彼に釣られたと言っても過言ではない。相手は全くその気はなかっただろうが、それは置いといて。








新歓のイベントで遊んでもらった翌月、彼はサークルを辞めた。「執筆に集中する」と言っていたそうだが、おそらくあの時からだ。彼の内側が変わったのは。









本当に変化した人間は、外側にそれを出さない。彼は垢抜けた訳でもなく、交友関係が変わった訳でもない。ただひたすら、自分の中にあった孤独を研いでいた。それが武器になって、明日形になるのだ。









「強い人」と無責任に言いたくない。けれど、武器を持った人の輝きは眩く、少し儚い。武器も持てない自分を恥じながら、向精神薬を飲み込んだ。











犬君先輩、デビューおめでとうございます。きっと貴方は私を覚えていないと思いますが、ずっと憧れていました。先輩の行く先に、少しでも多く幸があらんことを。